ブログ・更新情報・お知らせ |
社団法人 日本ピアノ調律師協会会員店 ピアノ公正取引協議会会員店 |
2020/08/30 最近のピアノ修理例:アップライトピアノのダンパーレバークロス交換
最近作業中のアップライトピアノの修理をご紹介致します。今回はダンパーレバークロスの交換修理です。
ダンパーレバークロスとは上のアップライトピアノのアクション模型の赤丸で囲まれた部品になります。もう少し拡大してみます。
木に張り付いている白いクロスがダンパーレバークロスとなります。ダンパーレバークロスはどのような役割をしているのでしょうか。
まず、ピアノは鍵盤を押してハンマーが弦を叩いて音が出ます。その後、鍵盤から手を離すと音が止まります(ペダルを踏んでいない状態とします)。その際、弦の振動を抑えて音を止める役割をしてるのがダンパーという部品になります。上の写真のクロスの近くにあるスプーンという金属部品が鍵盤の動きに連動してダンパーを動かしています。
上の写真の矢印の方向に動き、ダンパーが弦を押さえたり、離れたりします。そこでダンパーレバークロスなのですが、ダンパーがスプーンによって動かされるときに間に挟まってクッションの役割をしています。また、右ペダルを踏んだ際にはダンパーロッドというダンパーをまとめて動かす金属棒とのクッションにもなっています。
このクッションの役割をしているダンパーレバークロスが摩耗して薄くなるとダンパーの上がるタイミングが変わってしまいタッチが不揃いになります。そしてついには完全に擦り減って無くなってしまうと弾いたときに木と金属が当たるわけですので雑音が生じてしまいます。
ダンパーレバークロスの摩耗をより促進させるのが金属部分に生じた錆です。写真を見て頂くと表面が曇ったようになっていると思います。触るとざらざらしていまして、この錆がクロスを削ってしまいます。
見事に穴があいていますね。よく練習されていたようです。それでは新品に張り替えます。
真っ白な新しいダンパーレバークロスがきれいです。ですが、これで終わりではありません。このままアクションを戻しますとまた錆によってクロスが削られてしましますのでスプーンとダンパーロッドを磨いて錆をしっかり落とします。
ぴかぴかに磨き上げました。この後はピアノにアクションを戻しまして、メカニックの再調整をします。これでぐっとタッチもペダリングも滑らかに弾きやすくなりました。
ちなみに、ダンパーですがアップライトピアノもグランドピアノも高音部の途中からは無くなります。もともと高音部は音が小さく、音の減衰が速いのことと他の音域を弾いたときに高音部の弦が開放されていることで音の響きを豊かにするためです。ダンパーがついていない音から上の音は鍵盤が上がってもしばらく音が残ります。どの音からダンパーが無くなるかはピアノによって違いますので、お持ちのピアノでお試しになられてみて下さい。
ピアノを初めて買われた方や電子ピアノから買い替えられたお客様のお宅に調律に伺いますと、そのお宅のお子様に「高音部は音が残る」とご指摘を頂くことがあります。よく音を聴いてらっしゃると感心させられます。また、本物のピアノと電子ピアノの音の響きの違いもあるのだと思いますので、やはり出来る限り本物のピアノをお使い頂けると嬉しいです。